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これは加齢に伴う関節の変性疾患である。中年以降の人が階段の昇り降りなどで膝に痛みを訴えることがしばしばあるが、その原因として重要なものである。正常な関節では骨端を覆うなめらかな軟骨(関節軟骨)が接しあい、軟骨の表面は滑膜から分泌された潤滑油、すなわち関節液でぬれた状態になっている。ところが加齢に伴って軟骨は弾性と表面の滑らかさを次第に失い、繊維の房のような形に変わってくる。もともと軟骨の組織は、膠原線維の束を基質(コンドロムコイド)でねりかためたような構造である。そのような関節にたえず重量がかかり、その結果、軟骨が使い古され、毛羽立った状態と考えればよい。実際、この変化は膝関節・股関節・脊椎の関節など、重力が強く作用するところに発生する。病変が進行すると、やがて軟骨がすりへって下の骨組織が露出するに至る。軟骨は主に関節の縁のところで新生し、そこは次第に軟骨から骨に変わって「骨棘」といわれる骨の突起をつくり、X線写真に写ってくる。

「変形性」関節症とは、このことに由来する言葉である。

[ 軟骨組織の変化 ]

 関節軟骨の摩耗により、関節軟骨は荷重部で消失し軟骨下骨が露出する。この結果、3つの骨変化が引き起こされる。軟骨下骨はさらに摩耗され、硬化し、象牙化し、軟骨下骨内に嚢腫が形成され、骨辺縁部や靱帯・腱付着部に骨棘が形成される。

[ 病 因 ]

  一次性と二次性に分けられ、前者は高齢者が誘因なく膝の痛みや運動障害、膝に水がたまるなどの症状を訴え、明らかな原因が認められない場合で、後者は先天異常、代謝性疾患、外傷などの明確な原因があるものというふうに分類される。

[ 症 状 ]

 ・膝関節の硬ばる感じを初徴とするものが多く、長く正座したりあぐらをか いた後に立ち上がった時に疼痛や、膝が伸び難いことを訴える。通常は、座位から立ち上がる時の疼痛は起立によっていったん消失するが、長時間の起立歩行により再び疼痛が起こる。

 ・疼痛は膝関節の内側、あるいは膝蓋骨周辺にあり、膝窩部に緊張感を訴えるものもある。

 ・階段や坂道の昇降時にも疼痛を感ずる。

 ・初期には関節可動域はあまり侵されないが、わずかに正座が制限される。

 ・圧痛は内側関節裂隙、大腿骨内側顆関節面辺縁にある。

[ 内反型変形性関節症 ]

 病変が進行すれば、膝関節は屈曲、内反変形が増強し内外側コンパーメントが 共に接触している膝関節では、内側関節面での接触部分が後方に変位する結果、脛骨は大腿骨に接触している膝関節ではむしろ脛骨は内旋している。

 ・X線所見は、一側の関節裂隙狭小化、軟骨下の骨硬化、関節面の不整、顆部辺縁らびに脛骨顆間結節の骨棘形成などが現れる。更に、膝外側角(大腿脛骨角:femorotibial angle(FTA))が増大する。

  注)日本人の成人の正常膝関節では立位でFTAは男性が平均178°、女性が176°であり、内反型の変形性膝関節症では180°以上となる。

[ 診断・鑑別診断 ] 

  年齢、臨床症状、X線所見、関節液所見などを総合的に検討して診断する。

(関節液検査)

 正常の関節液に比較すると、ヒアルロン酸の濃度と分子量の低下が認められている。細胞数は2,000個/mm以内である。関節軟骨コラーゲンの前駆体であるⅡ型プロコラーゲンCペプチドが増加している。顕微鏡検査では軟骨細胞や軟骨片が認められる。

[ 治療法 ]

〈 保存療法 〉

日常診療においては手術療法よりも保存療法を行う頻度が多い。

膝関節症の危険因子や手術所見を十分に認識した上で指導すると、膝関節症の自然経過を遅らせ、症状を軽減させることに効果的である。

疼痛を抑える為に抗炎症薬を投与することは勿論有用であるが、同時に正座を避ける、杖を突く(患肢に加わる負荷が30%前後減少する)、速歩ではなく一歩一歩緩やかに歩く、などの日常生活上での指導が大切である。

1)積極的に膝周辺の筋力強化で‘筋肉サポーター’を作り膝関節を安定させる。

2)高齢者には臥位での訓練が適しており、まず仰臥位で膝関節を十分に伸展させたままで下肢全体を重力に抗して挙上させる。

3)股関節周辺の筋力強化によって歩容の安定と歩行時の下肢の垂直化を図る。

4)固定された自転車漕ぎは体重がサドルで全て支えられるために、自転車漕ぎ訓練中に膝関節に加わる負担が少ない。

5)ストレッチ体操:ハムストリングスが緊張していると膝関節の伸展に際して大腿四頭筋に余分な力が必要となり、その結果、膝蓋大腿関節に加わる過度の負担が疼痛の原因となる。

6)OAが進展すると十字靱帯に存在する固有感覚受容器も萎縮する為、神経―運動器協調機能の再教育訓練も大切である。

7)足底板で疼痛が軽減する機序は、下肢機能軸(ミクリッツ線)の直立化にある。股関節の外転筋力を強化すれば下肢機能軸の動的垂直化が可能である為である。その為、股関節を外転させるExが重用である。

  ①内側型関節症への適応:外側を高くした足底板

②外側型関節症への適応:内側を高くした足底板

[ 薬物療法 ]

抗炎症薬の内服と疼痛を訴える関節局所にヒアルロン酸の関節内注射も行われる。

副腎皮質ステロイドの関節内注射は劇的な消炎鎮痛効果があるが、長期間にわたり頻回に用いると、感染や関節破壊を引き起こす恐れがある。多くても2週に1度にすべきである。

[ 手術療法 ]

1)保存療法で症状の改善が診られない場合に手術療法を考慮する。

2)変形が少ない例に、侵襲の少ない関節鏡視下のデブリドマン(郭清術)を 行うことがある。

3)比較的若い患者で変性がまだ関節全体に及んでいない場合には、骨切り術によって変形を矯正すると共に、荷重を変性が及んでいない関節面に移動させる骨切り術を行う。  

・内反膝には脛骨粗面近位部での外反骨切り(高位脛骨骨切り術)を行う。

・外反膝には大腿骨顆上部での内反骨切りを行う。

4)末期の関節症で、患者の年齢が高齢(60~70歳以上)であれば人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:TKA)または(total knee replacement:TKR)を考慮する。

注)人工関節の除痛効果は確実で、術後療法も長期を要しないので最近盛んに行われるようになった。

施行後95%に満足できる成績が得られるが、人工関節の緩みや破損、プラスチックの摩耗、膝蓋骨脱臼などの合併症が有る。また、重篤な合併症としては感染と急性肺塞栓症がある。

人工膝関節手術

―Total knee arthroplasty(TKA)―

<人工膝関節置換術後リハビリプログラム>

術 当 日:膝ブレースにて固定、下肢挙上(座布団程度で)患部のアイシング(腓骨神経麻痺に注意)

術後1日:大腿四頭筋訓練、下肢挙上訓練開始

 CPM(0~30°)開始

術後2日:サクションドレーン抜去

 CPM(0~40°)にアップ

術後3日:膝ブレース装着下、車椅子移動開始

 以降CPMは毎日10°程度upして、術後7日までにROMを90°以上確保

術後1週:免荷にて歩行訓練開始

術後2週:部分荷重(1/4~1/3荷重)開始

術後3週:部分荷重(1/2~3/4荷重)にアップ

術後4週:一本杖にて退院(ROM:0~110°または120°) 骨移植症例は術後免荷期間は6~8週、その他のプログラムは同じである。

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