ギランバレー症候群について

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ギランバレー症候群について

 ギランバレー症候群は、上気道炎や急性腸炎などの先行感染後1~3週間で亜急性に弛緩性の四肢筋力低下を示す免疫性末梢神経障害であり、病変は主に脊髄神経根に存在する。GBSは以前は原因不明とされていたが、近年の知見で一部の症例で抗ガングリオシド抗体の関与が示され、それに伴い治療法も進歩を遂げた。

<GBSの疫学>

 先行感染の1~3週間後に、四肢遠位部より始まる亜急性期の弛緩性麻痺を呈し、重症の場合は呼吸筋麻痺に至り、人工呼吸管理が必要となる。症状は2~3週間で極期に至り、その後緩やかに回復する。たとえ人工呼吸管理が必要となった症例でも、予後は比較的良好とされているが、多少とも筋力低下を残す症例が多い。適切な治療およびリハビリテーションの可否が機能予後を左右する。GBSの発症率は10万人に対し1~1.5人程度で、やや男性に多いとされている。

<GBSの分類と病因>

1.脱髄型GBS

従来いわれている、比較的予後の良好なGBSで、病理学的には脱髄が中心で、電気生理学的には運動神経伝導速度の低下が主であり、脱髄型のGBSと呼ばれている。先行感染のある症例が多く、何らかの免疫学的機序が推定されているが、具体的な抗体は現在のところまだわかっていない。

2.軸索型GBS

近年機能予後の悪いタイプのGBSが多数報告されている。これらの症例は病理学的には軸索障害が中心で、電気生理学的には運動神経伝導速度検査でM波振幅の低下が目立ち、軸索型GBSと呼ばれている。軸索型GBSの先行感染に急性腸炎が多いことから検討がなされ、患者血清に抗Campylobacter jejuni(以下、C.jejuni)抗体が高率に検出され、C.jejuni腸炎により軸索型GBSが発症することが示唆されている。C.jejuni腸炎後のGBSの特徴は、感覚障害を認めず、運動神経の脱髄所見に乏しく、軸索変性が主であり、筋力低下や筋萎縮が遷延する。

<診断に必要な所見>

A.1肢以上の進行性の運動麻痺

軽度の失調はあってもなくてもよいが、運動麻痺の程度は、下肢の極く軽度の筋力低下から、四肢筋の完全麻痺、体幹、球、および顔面麻痺、さらには外眼筋麻痺に及ぶ。

B.深部腱反射消失

通常は全般的に消失するが、遠位部で消失していれば上腕二頭筋や膝では低下してもよい。

<診断を強く支持する所見>

A.臨床所見(重要な順番に呈示)

  1. 進行性:運動麻痺は急速に進行し、4週間以内に止まる。
  2. 比較的対称性
  3. 軽度の知覚障害
  4. 脳神経障害:顔面神経麻痺は約50%に生じ、しばしば両側性である。
  5. 回復:進行が止まってから2~4週間で回復し始める。
  6. 自律神経障害:頻脈や他の不整脈、起立性低血圧、高血圧など。
  7. 神経症状発生時には発熱がない。

(非定形例)

  1. 発症時の発熱
  2. 痛みを伴う強い知覚障害
  3. 4週間以内に及ぶ進行
  4. 回復なく進行したり、強い後遺症を残す
  5. 括約筋障害
  6. 中枢神経障害:強い小脳性失調、構音障害、バビンスキー反射、境界不明瞭な知覚障害

B.髄液所見

  1. 髄液蛋白:発症1週間以後に蛋白が増加
  2. 髄液細胞:単核球が10/㎕

(非定形例)

  1. 発症後1~10週でも蛋白が増加しない(まれ)
  2. 細胞数が単核球で11~50/㎕

C.電気診断学的所見

 症例の約80%に、経過中のある時期に神経伝導遅延やブロックがある。伝導速度は普通、正常の60%以下であるが、その過程はまちまちであり、全ての神経が障害されるわけではない。

<GBSの治療>

 一般にGBSは経過良好な疾患であり、自然に軽快するとの認識があったが、無治療の場合、重症度が上がり、回復までの期間も長期化する。したがって早期から積極的に治療・リハビリテーションを開始し、できるだけ機能障害が少なくなるように努力することが大切である。

1.急性期のリハビリテーション

発症早期の末梢神経の炎症が強い時期には、リハビリテーションを行うことで、逆に末梢神経の血流が低下し悪影響を及ぼすという報告もあるが、少なくとも関節拘縮、廃用性筋萎縮や褥創の予防の為のリハビリテーションや肺理学療法は必要と考えられる。しかし、積極的な筋力増強訓練は、炎症の増悪による症状の悪化や筋の疼痛を生じる可能性があり、控えたほうがよい。

2.慢性期のリハビリテーション

慢性期に入ると筋力の回復状況に合わせた積極的な筋力増強訓練を行う。しかし、持久力に乏しいことが多いため、休息を取り入れながら訓練を配慮が必要である。また、過用性の筋力低下や、腱の延長や断裂などの過用性の損傷に対する注意、また筋緊張が低下している場合が多いため過度の筋伸張に対する注意が必要である。

<評価>

 以下の障害が生ずる可能性を踏まえて評価にあたらなければならない。

  1. 筋力障害:MMTなど
  2. 末梢神経障害:電気生理学的検査、強さ―時間曲線など
  3. 感覚障害:表在、深部感覚検査
  4. 関節可動域障害:ROMテスト
  5. 疼痛:VASなど
  6. 呼吸障害:胸部X線、血液ガス分析
  7. 自律神経障害特に心臓血管系:心電図、血圧、体温など
  8. 脳神経障害:脳神経検査
  9. ADL障害:Barthel indexなど
  10. 歩行障害:歩行距離と速度の評価、異常歩行分析

                        etc

<GBSにおける痛み>

  1. 感覚障害/異常感覚
  2. 腰背部痛/神経根痛
  3. 髄膜炎
  4. 筋肉痛
  5. 関節痛
  6. 腹痛(内臓痛)
  7. その他

<ギランバレー症候群の予後推定基準案>

(1)発病初期

  1. 発病時年齢が30代以下で極期に不全四肢麻痺→早期回復群となる可能性が大
  2. 発病時年齢が40代以上で極期に完全四肢麻痺→回復遅延群となる可能性が大

(2)発病後1ヶ月

  1. 起座・起立が自立し、かつ握力の回復あり→早期回復群となる
  2. 起座・起立が不能で、かつ握力の回復なし→回復遅延群となる可能性が大

(3)発病後2ヶ月

  1. 起座・起立が自立し、かつ握力の回復が著明→早期回復群となる
  2. 起座・起立は自立しているが、握力の回復なし→中間群となる
  3. 起立が不能で、かつ握力の回復なし→回復遅延群となる
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