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臨床像

坐位や立維持に健側上下肢で押してしまい、患側方向に傾き倒れる現象。姿勢を他動的に矯正(健側方向に体重移動)すると健側上下肢による抵抗が強くなる。

Daviesはこの現象をpusher症候群と呼び、右半球損傷患者に多く、USNや病態失認を伴うと報告した。

しかし、Pedersenらは、このようなpushingのある患者とない患者の間で、USNや病体失認の頻度にも差がみられず、また半球損傷との関係もない等から、症候群としての具体的な根拠がないことを指摘している。

本質的な機序は解明されていないとしながらも、現状に対する自己意識性の欠損が基盤にあり、そこから波及する予測、予期などの障害を一要因に上げている。また、IPを呈する左右半球損傷例の内省報告から、患側方向へは楽観的で安易で曖昧な表現を示すことを確認している。このことから半球間抑制障害との合致性を推論している点では興味深く、IPの機序、治療方略考える1つの指標となる。

アプローチ

助長させないように、心理的、姿勢的な配慮が必要である。坐位姿勢で患側に容易に倒れる症例に対しては、健側前腕による支持の導入が有効と思われる。

この方法は、健側への体重移動とバランス保持を容易にし、患側へのpushingや体重移動を抑制する。慣れてくれば支持基底面を狭くし、端坐位保持へと近づける。また、テーブルによる上肢の体幹前方支持、ベットや斜面台による患側骨盤の挙上、足底接地の回避などによって坐位保持の安定化を図る。

IP症状の強い例の立位・歩行では健側下肢へのやみくもな重心移動や杖の使用は逆に症状を増悪させるために注意を要する。また、後方へのpushingもみられるため、後方からの介助が選択される。

下肢装具の利用価値の高さも指摘されている。仮に麻痺は軽度であっても患側に押し出される分だけ支持性が必要となるため、オーバーブレーシング気味にすることや長下肢装具は体幹の立ち直り反応の誘発を、患側の補高用足底板は健側下肢への体重移動をそれぞれ容易にし、IP抑制の一肋となる。掴まり位置を高くした平行棒や肋木での立位訓練、杖の代用に点滴棒を前方につく歩行訓練等も有効とされている。

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