大脳辺縁系について画像を用いて説明

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Ⅰ、大脳辺縁系とは

大脳辺縁系はいくつかの脳組織の複合体ですが、大脳を外側から眺めても見つけることはできません。
まず大脳を正中で縦割り(矢状断)にして、さらに中脳を取り除いてその割面をみると、脳梁と第三脳
室を取り囲むように、帯状回、海馬傍回、海馬回鉤などの脳回や脳弓が認められる。海馬傍回や海馬回
鉤の内部には、これに関連した海馬、歯状回、扁桃体などが存在します。これらの組織や、乳頭体、視
床前核などを合わせて大脳辺縁系と総称します。発生学的にはこれらはモンロー孔を中心として、その
辺縁に環状に配列して発達した灰白質からなる組織です。
                               
      
①脳梁     ⑧帯状回
②第3脳室   ⑨脳弓
③透明中隔   ⑩乳頭体
④前交連    ⑪海馬傍回
⑤領下野    ⑫海馬
⑥嗅神経    ⑬扁桃体
⑦海馬回鉤  

Ⅱ、大脳辺縁系の働き

◎本能行動

本能とは、人間を含むすべての生物が、生きて子孫を残していくために、生まれながらに備わっている能力です。食欲、排泄、性行動、探索、帰巣、好奇心など、すべてこれらは生命維持や子孫繁栄のために必要な能力です。

動物の扁桃体を刺激 → 舌なめずりをしたり、物をクチャクチャと食べる動作が現われる。
動物の扁桃体を破壊 → 異常な食欲亢進をきたし、食べられないものまでも口に入れて食べています
現象が見られます。

辺縁葉(扁桃体と隣接している)を破壊・除去 
→ 性行動が亢進し、相手にかまわず(種や性に関係なく)性行動を示そうとします。ただし、この
現象が現われるのはオスだけで、メスではみられない。

海馬や扁桃体を破壊 → 好奇心や探索行動を示すことを忘れ、無関心になることも知られている。
*このように、実験的に扁桃体や海馬を刺激したり破壊することで、本能行動の異常を誘発できるこ
とは、大脳辺縁系が本能行動と関係が深いことを示唆する所見と考えられている。

◎情動反応

実験的にサルの両側扁桃体を破壊すると、蛇を見てもまったく恐怖心を持たなくなります。また、同時に
攻撃性を失い、おとなしくなります。一方、視床下部にある部分を破壊すると、怒りっぽくなったり、凶
暴になって攻撃的な性格が現われます。このように、大脳辺縁系やそれに関連のある視床下部には、情動
反応に関係していることが知られています。実験的にサルの両側側頭葉を切断すると、何でも口に持って
いく現象や、情動反応・攻撃性の低下、性行動の亢進がみられるようになります。これらの症候をクリューバ
ー・ビューシ-症候群といいます。

◎記憶

記憶は、臨床的には「身の回りの出来事(体験)や情報を正しく保持する能力」と定義づけられ、短期記
憶と長期記憶の2種類があります。短期記憶は数十秒程度の時間内の記憶で、大脳機能が全般的に低下し
た時に障害されやすくなります。長期記憶は「最近の記憶」と「遠い記憶」に分けられ、この差は数ヶ月
~数年の単位で区別されるのが一般です。長期記憶障害のうち、記憶障害と作話を有するものをコルサコ
フ症候群と呼びます。これらは大脳辺縁系の一部である乳頭体や視床の一部が損傷された時に発症し、慢
性アルコール中毒の患者さんによくみられます。単なる長期記憶障害は単純性健忘症ともよばれ、作話を伴う
とこはありません。この場合、原因となる病変の場所は両側の海馬にあると考えられていますが、側頭葉
深部白質の障害と考える人もいる。

◎てんかん焦点

海馬の神経細胞は、一酸化炭素中毒やその他の低酸素血症状態で障害されやすく、すぐに変性をきたし、
てんかん焦点になります。これにより引き起こされたてんかんを、側頭葉てんかんといい、精神運動発作
という独特の発作をきたいします。この際に経験される嗅覚幻覚や幻味、幻聴などは、大脳基底核がこれ
らの感覚系皮質や視床と深く関係していることを示唆するものです。同様に、発作の際に経験する恐怖感
や不安感などの情動異常も、大脳辺縁系が情動反応に関係していることをうかがわせる所見といえる。

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