痛みの分類について
(1)痛みの性質からみた分類
①1次痛(first pain)or速い痛み(fast pain)
- 痛みの原因となる刺激(侵害刺激)が加えられている間、刺すような鋭い痛み(鋭痛)として知覚される。
- 局在性が明瞭である。
- 主に12~30/secの興奮伝導速度をもつAδ線維により中枢へ伝えられる。
- 末梢刺激または心理的要因で修飾されることはない。すなわち、慣れの現象は起きない。
- 主に急性期の痛みを反映している。
②2次痛(second pain)or遅い痛み
- (slow pain)痛みの原因となる刺激(侵害刺激)が加えられて1秒後位に疼くような鈍い痛み(鈍痛)として知覚される。
- 局在性が不明瞭で拡散する傾向をもつ。
- 主に2m以下/secの興奮伝導速度をもつC線維により中枢に伝えられる。
- 末梢刺激または心理的要因で修飾される。
- 主に慢性期の痛みを反映している。
- 理学療法場面で遭遇する痛みのほとんどはこれに属する。
(2)部位からみた分類
①表在痛(superficial pain)
皮膚に発生する痛みをさす。1次痛、2次痛とも起こる。
②深部痛(deep pain)
骨格筋、関節、靱帯、骨膜などに発生する痛みをさし、鈍く疼くような鈍痛(2次痛)が起こる。
③内臓痛(visceral pain)
内臓に起こる痛みで鈍痛である。
(3)臨床における一般的分類
①運動痛(motion pain)
自動運動、他動運動時に起こる痛みをいう。運動時に痛みの原発部位とは異なる所に痛みが生じることがあるが、それには放散痛(irradiating pain)と関連痛(referred pain)がある。
②安静時痛(rest pain)
安静時に起こる痛み。
③夜間痛(night pain)
夜間時に起こる痛みで、安静時痛として考えてよい。
④圧痛(tenderness)
痛みの部位を決定したり、痛覚過敏部位を探索したりするために圧迫刺激を加えるが、そのときに出現する痛みをいう。
放散痛、関連痛を伴うことが多い。
⑤放散痛
痛みの原発部位を始点としてその周囲に放散する痛みをいう。
⑥関連痛(連関痛:投射痛)
痛みの原発部位から飛び離れた部位に起こる痛みをいう。
狭心症発作の際に左肩からその上肢にかけて表在痛が起きたりすることがよく例に使われるが、中殿筋の後部線維の中枢側の圧痛点を強く圧迫すると、同側の坐骨結節から大腿後面-下腿外側にかけて痛みが生じるなどさまざまな部位にみられる。