錐体路は大脳皮質から出た線維が延髄の錐体を下行することから付けられた名前で、皮質脊髄路だけを指すこともあるが、これに皮質延髄路を加えるのが一般的である。
皮質脊髄路
大脳皮質にある錐体細胞から出る。約2/3は中心前回(4野)、二次運動野および運動前野(6野)から、残り1/3は中心後回(1野、2野と3野)から起こる。
これらのうち約3%は、中心前回第5層のベッツの巨大錐体細胞の軸索である。
これらの軸索は内包を通り、中脳の大脳脚を通り、橋を貫いて延髄の錐体に至る。錐体の下端部で、外側皮質脊髄路と前皮質脊髄路に分かれる。
- 外側皮質脊髄路
延髄の錐体の下端部で約90%の線維が交叉する。これを錐体交叉という。交叉した線維は反対側の脊髄側索に入り、下行しながら、脊髄のさまざまな場所で前柱の運動ニューロンに直接あるいは介在ニューロンを介して連絡する。この経路は四肢の遠位部の動きに関与している。特にベッツ細胞からの線維は手指の細かな随意運動に関与している。
- 前皮質脊髄路
錐体で交叉せずにそのまま下行、同側の脊髄前索に入り、下行しながら脊髄のさまざまな場所で白交連を通って交叉し、前柱の運動ニューロンに直接あるいは介在ニューロンを介して連絡する。白交連とは、左右の前索の間にある白質である。この経路は頸、体幹、四肢の近位部の動きに関与している。
皮質延髄路
大脳皮質の主に中心前回の一部から出て、皮質脊髄路に伴って内包を通り、中脳から脊髄の頸髄上部にかけて存在する脳神経の運動核に、原則として両側性に介在ニューロンを介して連絡する。例外は顔の下半分の表情筋と副神経支配の胸鎖乳突筋と僧帽筋で、これらは同側性だけである。また同側の皮質延髄路の線維が障害されると、仮性球麻痺が生じる。
錐体路の働き
錐体路は一言でいえば、意図的な運動(随意運動)を顔面、咽頭、手足、体幹などに起こさせるためのインパルスを伝達する、中枢神経系の主要な伝導路である。
また、錐体路(皮質脊髄路、皮質延髄路)の上位運動ニューロンは、錐体外路と呼ばれる神経路とともに、下位運動ニューロンに対し、いつも運動や反射が過剰にならないように抑制をかける働きもしている。
よって、錐体路が障害されると、複雑な運動を巧みに、あるいは思いのままに行うことができなくなったり腱反射が亢進したりする。
錐体路徴候
- 筋萎縮を伴わない痙性麻痺
- 深部反射の亢進:膝蓋反射、上腕二頭筋反射など
- 病的反射の陽性:バビンスキー反射など
- 表在反射の消失:腹壁反射など
<参考引用文献>
標準理学療法士・作業療法士 神経内科学 医学書院
絵で見る脳と神経 医学書院
理学療法士・作業療法士・言語療法士のための解剖学 廣川書店