Charcot関節について
Charcot関節は脊髄癆に於て、臨床症状として出現する。これは、膝関節や股関節、足関節、腰椎などに起こる無痛性の変形をいう。
≪脊髄癆について≫
<概念>
梅毒スピロヘータ-による中枢神経感染症であり、梅毒に罹患した後10~15年程たって発病し、緩徐に進行する疾患である。主に40~50歳代の男性にみられる。病変部位は脊髄後索が主であり、後根神経節や後根の病変も伴う。
<臨床症状と病態>
長期間無症状の後に以下の症候が緩徐に出現、悪化してくる。
- 下肢あるいは体幹に突発するチクチクと刺すような鋭い自発痛があり最も重要な初期症状である。
- 暗所での歩行困難や立位での動揺が起こる。これは関節位置覚の障害による後索性の運動失調で、Romberg徴候も陽性となる。
- Argylly-Robertson瞳孔がみられる。これは対光反射が消失するが、近見反応が保たれるものをいう。無症状の時期から高頻度にみられる。
- 排尿困難が起こり、多量の残尿を生じ、尿があふれるように漏れる溢流性尿失禁が起こる。
- アキレス腱や睾丸の把握痛の減少や消失。これは深部痛覚の障害によるもので、表在痛覚はその割に障害されない。
- 下肢腱反射の消失。
- 腹部の疝痛。
- 視神経萎縮。
- 筋緊張の低下。
<頻度> 脊髄癆は前世紀の初め最も多い脊髄疾患であったが、梅毒の治療にペニシリンが導入されて以来減少し、現在では非常に稀となった。しかし、初期の梅毒感染時の治療が不十分な場合には発病する可能性がある。