難病

パーキンソン病の分類、症状、原因について

パーキンソン病

病態

パーキンソン症候群は原因が明らかでなく、発病年齢や症状の経過に共通した特徴を持つパーキンソン病または原発性パーキンソン症候群と、原因が明らかな疾患に合併している続発性または症候性パーキンソン症候群とに分類されている

パーキンソン症候群の分類

  • 特発性 
  • パーキンソン病 (発症年齢40歳≧)
  • 若年性パーキンソン病 (発症年齢<40)
  • 症候性(続発性)
  • 脳血管性パーキンソン症候群
  • 薬剤性パーキンソン症候群
  • 脳炎後パーキソン症候群
  • 中毒 (一酸化炭素、マンガン、MPTP)
  • 脳腫瘍 (前頭葉)
  • 頭部外傷
  • 正常脳圧水頭症
  • Wilson病

パーキンソン症状を伴う変性疾患

  • 進行性核上性麻痺
  • Corticobasal degeneration
  • 線条体黒質変性症
  • Shy-Drager症候群
  • 脊髄小脳変性症
  • Alzheimer病

パーキンソン病は錐体外路系の退行性神経疾患であり、その病変は中脳黒質、線条体、青斑核、迷走神経背側核、大脳皮質などに検出される。特に黒質におけるメラニン細胞の変性、崩壊、消失が主病変であり、その過程においてLewy小体とよばれる特有な構造物が増加する。この黒質変性の結果、黒質のドパミン合成が十分行われず、ひいては線条体に蓄積されるべきドパミンが減少してドパミンとアセチルコリンの動的バランスが崩れ後者が優位となる。

線条体におけるドパミンの役割は、知覚と運動の統合、精神機能および自律神経のhomeostasisに関係があるといわれ、ドパミン現象はL-DOPA投与によりドパミンを補充すれば症状の軽減は可能である。一方、続発性パーキンソン二ズムにおけるように線条体に病変が強くドパミン受容体が傷害されているものではL-DOPAの効果は明らかではない。パーキンソン病の主要症状には、1.振戦、 2.固縮、 3.無動、 4.姿勢反射障害の4大症状がある。

大症状

1)振戦 (tremor)

振戦は4~6Hzの比較的遅い振戦で、安静時に強く随意運動時で減弱・消失する。また最も出現しやすいのは罹患筋に適度な緊張が保たれている状態であり、睡眠時のように筋緊張が極端に低下した状態では出現しない。また精神的緊張により増強され、通常臥位よりも立位でより顕著となる。出現部位は上肢(手指)が最も多く、次いで下肢と顔面領域(顎、舌、唇)である。四肢では通常一側から始まり、両側性のなっても左右差があるのが特徴で、初発側に多い。

本疾患の振戦は症候学的には主動筋・拮抗筋、例えば屈筋と伸筋が律動的に交互に収縮することによって起こる。手指では、pill rolling tremorと呼ばれてる、丸薬を丸めるような振戦が特徴的である。

2)固縮 (rigidity)

関節を他動的に動かしたときに感じられる病的な抵抗には痙縮と固縮がある。痙縮は関節の多動運動中、一定の位置を過ぎると急に抵抗が抜ける折りたたみ現象で錐体路徴候の1つである。時にこの抵抗にはガクガクと断続的な歯車現象が起こる。これは、固縮を起こ機序に振戦を起こす異常が変わったものと考えられる。

軽い固縮を見出すには、上枝では立位でやっと手が届く所の物を足で踏み出すことなく取るよう命ずると、対側の手首に固縮が出現するFromentの固化徴候が有効である。下肢では、他動的に背屈させると前脛骨筋が収縮し腱が隆起して見えるうえすとふぁるて見えるウエストファル現象が出現する。

固縮の発生機序に関してはいまだ解明されていないが、Tattonらによると、正常者に比べ固縮乗る患者では多シナプス反射が亢進していることより、基底核障害が何らかの機序でこの反射経路の興奮性を高め、その結果固縮が生じるのではないかと報告している。

3)無動・寡動 (akinesia bradykinesia)

無動・寡動には、随意運動が遅れ、開始した動作も緩慢にし行えない現象をいう。また反復運動や複雑な運動も困難となる。固縮が著明であればそれによって随意運動の開始・遂行は障害されるが、無動は固縮とは独立の障害であると考えられている。

無動は仮面様顔貌、小さくて不明瞭な発語、小刻み歩行や手の振りの消失、字が小さくなる小字症や、ボタンのかけはずし、食事などの上枝動作、姿勢変換の困難など、姿勢反射障害とともに日常生活を障害する最も重要な症候である

無動の出現機構はよくわかっていないが、L-DOPAによく反応する症状で、線条体におけるドパミン欠乏を最もよく反応した症状と考えている。

4)姿勢反射障害

典型的なパーキンソン病患者の姿勢は、直立姿勢では頭を前方に突き出し、体幹は前屈し、肩が落ち、上枝は肘屈曲、両手は体の前方に位置する。両膝関節も屈曲し、重心が前方に移動した前傾前屈姿勢、いわゆる猫背様をとる。また、坐位野外でも独特な姿勢を取り、たとえばベッドに臥位になるように支持すると、斜に横たわったまま何時までもその状態でいたり、椅子に斜めになって腰掛けていることがある.これらは水平・垂直の空間的認知障害によるものと考えられている。

症状が進行するにつれて、姿勢制御の障害として立ち直り反応、平衡反応が消失して転倒しやすくなる。立位で前後左右方向から外力が加わると反射的に姿勢を立て直すことができず、まるで木が倒れるように真直ぐ倒れたり、歩行中も物につまずきやすく倒れやすい。また、軽く押されただけでその方向へ突進し、小刻みに走り出し転倒する突進現象が見られる。

このような平衡反射障害は振戦・固縮とは独立した症状が考えられ、その責任病巣は大脳基底核の淡蒼球ともいわれているが、いまだ明確なメカニズムは解明されていない。

その他の障害

1)歩行障害

パーキンソン病患者の歩行障害は、固縮・無動に加え淡蒼球に起因するといわれる姿勢反射障害との組み合わせで歩行は、すり足、小刻み歩行、すくみ足などで、歩行の左右の手の振りが小さい。また、歩行しているうちに徐々に速度が速くなり自分で止められなくなり、加速歩行となることがある.また、方向転換が困難となり易転倒性が見られる。

2)言語障害

下、唇、咽頭筋の運動は固縮・無動のために動作の開始が遅れ協調性が障害される。そのため発語になめらかさがなく、単語間の息継ぎが長く、しゃべり出しにくい。また抑揚がなく、声も小さく、終わりに近ずくにつれて早口になるため聞き取りにくくなる。症状が進行すると咀嚼や嚥下も障害される。

3)精神症状

パーキンソン病患者は抑欝傾向、不眠、不安、焦燥などの精神症状が認められる。また、抗パーキンソン病剤による精神症状(幻視、せん妄、妄想、幻聴、体幹幻覚)も認められるといわれている

4)知的症状

パーキンソン障害における知的障害には、記憶障害、視空間的認知障害、注意の障害、前頭葉機能障害などがあり、特に記憶及び認知に関しては比較的早期から症状が認められることがある。

5)自律神経障害

便秘が最も多く、そのほか流涎、過剰発汗、膏顔、起立性低血圧、排尿障害などが認められる。 

あわせて理解しておきたい錐体外路症状についてはこちら

-難病
-, , ,